学術論文における著作権・プライバシー等の問題について。

togetter.com

著作物利用に関して。

学術目的によるデータ分析の為に、他データを利用する事は問題ないかと。

(情報解析のための複製等)
第四十七条の七  著作物は、電子計算機による情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の統計的な解析を行うことをいう。以下この条において同じ。)を行うことを目的とする場合には、必要と認められる限度において、記録媒体への記録又は翻案(これにより創作した二次的著作物の記録を含む。)を行うことができる。ただし、情報解析を行う者の用に供するために作成されたデータベースの著作物については、この限りでない。

著作権法

ここで念の為。「複製権の侵害にならない」という事についての話です。論文に書くかどうかは別の話。
但し、「必要と認められる限度において」という記述は認識しておいた方が良く。「検討した記録」はあった方がよいです。

著作者名の公表について。

そもそもでいうと、あんまり「著作者名を公開しないという意思」については考慮されていない所ではあるんですが、氏名表示に関しての権利は著作者にあります。
てか、大事なのは著作権者の意思です。たかだか十人程度の人に連絡くらいすりゃいいじゃんと思うんですが。

(氏名表示権)
第十九条 著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。
2 著作物を利用する者は、その著作者の別段の意思表示がない限り、その著作物につきすでに著作者が表示しているところに従つて著作者名を表示することができる。
3 著作者名の表示は、著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができる。
4 第一項の規定は、次の各号のいずれかに該当するときは、適用しない。
一 行政機関情報公開法、独立行政法人等情報公開法又は情報公開条例の規定により行政機関の長、独立行政法人等又は地方公共団体の機関若しくは地方独立行政法人が著作物を公衆に提供し、又は提示する場合において、当該著作物につき既にその著作者が表示しているところに従つて著作者名を表示するとき。
二 行政機関情報公開法第六条第二項の規定、独立行政法人等情報公開法第六条第二項の規定又は情報公開条例の規定で行政機関情報公開法第六条第二項の規定に相当するものにより行政機関の長、独立行政法人等又は地方公共団体の機関若しくは地方独立行政法人が著作物を公衆に提供し、又は提示する場合において、当該著作物の著作者名の表示を省略することとなるとき。
三 公文書管理法第十六条第一項の規定又は公文書管理条例の規定(同項の規定に相当する規定に限る。)により国立公文書館等の長又は地方公文書館等の長が著作物を公衆に提供し、又は提示する場合において、当該著作物につき既にその著作者が表示しているところに従つて著作者名を表示するとき。

著作権法

実は言われてないけど、本当はすげー問題な点。

一次著作者が正しく示されていないです。
それだけでも十分この論文は掲載不可なシロモノだと思いますよ。

限定的に公開されているものを公開情報として扱ってよいか。

条件付きで提供されているものに関して、その条件を無視する事は一般的には民法上の問題になるかと思います。
契約違反ですね。
これややこしいのが、元の著作者とPixivとの間に成立している契約と、Pixivと今回の研究者の間に成立している契約と、どちらも違反している可能性がある事です。会員限定の情報なので、その契約に縛られます。不正アクセスはやってないと思いますが。
面倒なんで後は省きますが、損害賠償等が発生するのはどちらもで、ただ、行為の主体が研究者の為、最終的には研究者がお支払する事になるかと思います。
但し、念の為ですが、論文によって傷付けられる名誉等に関しては、元の著作者と研究者の間に発生する問題だと思います。

プライバシー権を考える前に、HNなどの著作者名がどういう扱いになるか。

個人は特定されるもの、として考えた方がいいです。ネット上の人格も人格として扱われるという事です。

有害という言葉による名誉毀損になるかどうか。

研究として考えると、定義が安易ですし、「PixivのとあるR-18の小説と似ているから同じくエロとしてフィルタリングされる」ってのに暗喩で有害指定って、ダメですよねえ。
「フィルタリングなんで受益者があります」って言っても、それ、やりたいのは、「親」であったり、「学校」であったりと、「子どもの権利なんて思ってんだ」という話になるのでちょっとね・・・・・・
その研究の先に、「他人の権利侵害が発生する可能性がある」ってのはちょっと考えておいた方がいいです。何でアダルトフィルタリングで画像から入ったのかとか分かってないんでしょうねえ。


R-18→有害、ではないんですよ。あくまでも、これ18歳未満に見る事を勧めないというタグなんで。
特に、有害性が立証されたコンテンツでもないです。

研究倫理。

例えば、他の人が再検証する為に、論文にデータを引っ張る為の著者名とURLが載せられる必要はないんですよ。
それは論文の著者に個別で検証する人が求めるので十分ですし、プライバシーを守った上で限定公開すること可能ですよね。
そもそも、分析に著者名やURL入れてないはずですし。


私、この時代に、意識がここまで低いのちょっとびっくりしてます。


http://www.biometrics.gr.jp/news/all/standard_20150310.pdf
こういうの幾らでもあるんですが、
多分誰も読んでないんでしょうねえ。
togetter.com
こんな感じですし。


「法令違反」とかではなく、「関わる人の人権を尊重する」って話なんですよ。
「慣習」とかそういうもので片付けていい話じゃなくて、あと、論文発表には、いくつもの段階がある訳で、その全てで「これ嫌がる人いるんじゃないの」ってのが配慮されていないって事なんですよこれ。
いや、ホントロクでもないなあこれ。


周りにちゃんと叱る大人いないんでしょうね。