PEZY Computingの件で少し。

tech.nikkeibp.co.jp
を見て。


多少ややこしいので簡単に登場している会社等を記載しておく。

会社

PEZY Computing

スパコン関連の事業の取りまとめ、メニーコアプロセッサの開発やってる。

ExaScaler

液冷の装置と基盤の開発やってる。

ウルトラメモリ

磁界積層メモリだったかの開発やってる。ここが元EMSマネージメントで、最初はレースの運営会社だった。
商号変更、事業内容変更しているものの、会社としては継続となるので、色々な負債を引き継いでいる事になる。

詐欺の疑いとなっている案件

PEZY社長逮捕、スパコンの旗手に何が起きたのか | 日経 xTECH(クロステック)
これがよくまとまっている。
この中で「バンプレス3次元積層技術を用いた省電力メニーコアプロセッサの開発」はPEZY Computingが、「超広帯域Ultra WIDE-IO3次元積層メモリデバイスの実用化開発」はウルトラメモリが開発の主体になるっぽい事業内容なのだが、

NEDOは、株式会社PEZY Computing代表取締役社長(法人番号 3010401086048)が弊機構からの助成金を不正受給したとして詐欺罪で起訴されたことを受け、平成30年2月20日付けで以下2事業の交付決定の一部を取り消し、詐取されたとされる助成金全額の返還を受けました。

NEDO:(株)PEZY Computingに対する交付決定の取消及び助成金の返還について

なので、不正分及び加算金を受け取っている。但し、これらの2事業の中で不正があったかどうかは一応念の為だが確定はしていないし金額も確定していない。
他の事業について停止されるかどうかは不明。

JSTが返金を求めた金の話。

産学共同実用化開発事業(NexTEP)で採択した株式会社ExaScalerの課題の開発中止について
説明は以下が詳しい。
52億円全額返還の理由、JSTがスパコン開発中止をPEZY関連会社に通知 | 日経 xTECH(クロステック)


最初から決められている仕掛けであるのだが、「開発中止時の処理」が類を見ない鬼のようなお約束だと思う。企業側都合での撤退が許されていない。

 開発中止を決めた理由を日経コンピュータJSTに問い合わせたところ、JSTがExaScalerに実施したヒアリングの中で「磁界結合に関する開発内容の大幅縮小」と「同開発期間の大幅延長」が明らかになったためと回答した。

 JSTがこれまでExaScalerに融資した52億円の開発資金は、同スパコンの事業化に成功した場合は最大5年の猶予を経て10年以内に全額返済、失敗した場合は10%分のみ返済となる契約だった。

52億円全額返還の理由、JSTがスパコン開発中止をPEZY関連会社に通知 | 日経 xTECH(クロステック)

開発内容の大幅縮小という事であるが、「当初お約束していたものとモノが変わる」のがヤバイ。

元は

 本開発は、新しい高効率メニーコア・プロセッサに、DRAMとの間の超広帯域伝送が可能な磁界結合インタフェースを組み合わせ、更にユニット全体の液浸冷却を行うことで、小型、低消費電力、かつ、世界トップレベルの計算性能を持つスーパーコンピュータを開発するものである。
  最終的には、理論性能30Peta FLOPS級の高性能スーパーコンピュータを開発し、世界トップレベルの絶対性能、消費電力当たりの性能、グラフ処理能力について、高い面積計算効率の実現を目指すものである。

産学共同実用化開発事業(NexTEP)で採択した株式会社ExaScalerの課題の開発中止について

で、これの受託開発なので、「DDR4のメモリつんでお茶濁す」という訳にはいかない。
高効率メニーコアについては、既に別の所で開発されている(バージョンアップはあるだろうが)から、開発のロードマップが狂いそうにない。液冷も問題ない。磁界結合インタフェースが問題で、本来去年の年末に積まれているはずだったものがここに来てまだ載っていないという状況である(当初から見ると)。
そもそも計画が短すぎるんじゃね?と思ったりしなくもないが、金を補助してもらって一気に製品化というストーリーのようなので、実装遅延でもかなり痛い可能性が。いやまあ流石に社長逮捕が影響していないとは思わないが、詐欺とは直接関係がない。ないが、引っ剥がされるというのはこういう事である。
無論、ExaScalerも抵抗しているとは思うし、故にロードマップの変更を申し出ているのだと思うが、この会社の担当ではおそらくない(ウルトラメモリ側)のもあって、説明が足りていなかったのではと思うのだが。


ただ、これおそらく当初より、「開発中止にはマネージメントの失敗が含まれる」と思われるので、スケジュール遅延「が」ヤバイ代物なのであり、事業を委託されている以上、マネージメントも会社に投げられている形なので、これは大ダメージだと思うんだよなあ。
どこかが資金援助してないかなーと思ったら、変な所が一枚噛んでるが、これ大丈夫かな。どれくらい資金注入すればいいのかというと、使い切ってそうなので、おそらくこの金額か倍くらいまでという事になると拙いよなあ・・・・・・