WHOのレビュー前の研究発表の話。

news.yahoo.co.jp
うーん、そこまでこの研究を甘く見てはいけないと思いますが。

効く効かないという事に白黒つける試験というよりは、「より効果のある治療かを見る」試験。

一応RCTではありますが、他の医学的な条件を揃えるという事はしていない、選択基準も除外基準もゆるゆるの試験です。
プラセボ治療と比較しているのではなく、地元の標準医療という事なので、そこまで厳密に比較した試験ではない、という事は了承してもらいたく。


ただ、現在世界で大流行している状況を反映させていると思えばよいかと思います。ターゲットは、入院を要する患者のイメージです。
18歳以上、入院して他の治療が行われる前の人、72時間以内に転院が予定されてないです。なお、治療薬の幾つかは前倒しで割付中止されてます。

治験の内容

www.medrxiv.org

Study drugs were Remdesivir, Hydroxychloroquine, Lopinavir (fixed-dose combination with Ritonavir) and Interferon-β1a (mainly subcutaneous; initially with Lopinavir, later not). COVID-19 inpatients were randomized equally between whichever study drugs were locally available and open control (up to 5 options: 4 active and local standard-of-care). The intent-to-treat primary analyses are of in-hospital mortality in the 4 pairwise comparisons of each study drug vs its controls (concurrently allocated the same management without that drug, despite availability). Kaplan-Meier 28-day risks are unstratified; log-rank death rate ratios (RRs) are stratified for age and ventilation at entry.

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.10.15.20209817v1.full-text

レムデシビル、ヒドロキシクロロキン、ロピナビル(リトナビル配合)、インターフェロンβ1a(皮下注射がメイン、最初はロピナビルと併用、後には併用していない)
現地の標準治療とランダム割付、オープン試験(最大5つへの割付)。
主要な評価項目は標準治療と4つの治療薬の死亡率の比較。
カプランマイヤー法での28日間のリスクは層別解析はしていない。log-rankの死亡のリスク比については、年齢と換気について層別解析した。

ここでのリスクというのは、死んだ人の数÷割付された人の数です。相対リスク比というのは、(比較する薬での死亡のリスク)÷(この場合は標準治療の死亡のリスク)です。

結果としては、

In 405 hospitals in 30 countries 11,266 adults were randomized, with 2750 allocated Remdesivir, 954 Hydroxychloroquine, 1411 Lopinavir, 651 Interferon plus Lopinavir, 1412 only Interferon, and 4088 no study drug. Compliance was 94-96% midway through treatment, with 2-6% crossover. 1253 deaths were reported (at median day 8, IQR 4-14). Kaplan-Meier 28-day mortality was 12% (39% if already ventilated at randomization, 10% otherwise). Death rate ratios (with 95% CIs and numbers dead/randomized, each drug vs its control) were: Remdesivir RR=0.95 (0.81-1.11, p=0.50; 301/2743 active vs 303/2708 control), Hydroxychloroquine RR=1.19 (0.89-1.59, p=0.23; 104/947 vs 84/906), Lopinavir RR=1.00 (0.79-1.25, p=0.97; 148/1399 vs 146/1372) and Interferon RR=1.16 (0.96-1.39, p=0.11; 243/2050 vs 216/2050). No study drug definitely reduced mortality (in unventilated patients or any other subgroup of entry characteristics), initiation of ventilation or hospitalisation duration.

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.10.15.20209817v1.full-text

トータル11,266人で確認してます。そこそこ数が多いです。
合計の28日間での死亡率は12%、死亡までの期間は中央値8日程度、四分位範囲は4-14日です。(四分位範囲というのは、第一四分位点から第三四分位点までを範囲として書いている話で、日数を順位付けしてカウントすると、この範囲の中に50%の人が含まれます。)

まあ、これは、実際カプランマイヤーとかフォレストプロットを見た方が早いなあ。
https://www.medrxiv.org/content/medrxiv/early/2020/10/15/2020.10.15.20209817/F2.large.jpg?width=800&height=600&carousel=1

https://www.medrxiv.org/content/medrxiv/early/2020/10/15/2020.10.15.20209817/F3.large.jpg?width=800&height=600&carousel=1


試験結果としての雑感

  • 現段階ではクローズドな比較試験より、こちらの方がより実情に近い。ACTT1はプラセボを飲ませているが、こちらの試験では標準治療は施している。
  • 各地の環境要因の違い、また治験参加者の地域の偏りについてはいずれも調整はされていない。人種の差とかは家庭環境とも疑似相関するのでとても言えたものではない。
  • 薬の飲ませ方に問題がある可能性もある為、「効く可能性は常にあるが」、とりあえず、現在の治療で死亡率を下げられてそうにはない。


まずもって、「感染初期に飲ませる」とかが高難易度でもあり、あと、あまり使用状況を制限しての探索的研究は悲しい事しか経験していないのでげふんげふん。治療期間が短くなる事は医療機関の負担は下げますが、死亡率改善に向かうかは微妙なところかと。
オープン試験で改善が見えないってのはまあまあ問題です。本来改善方向へのバイアスがかかるので。もうちょい人が死にやすいと今の段階でも分かるかもですが。。。。。。