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こっち細かく把握されてた。
活性炭にひたすらヘリウム吸着させてたラグビー部のどっかのTV局に行った人を思い出すなど。私がやってたのはマイカ表面での液晶分子構造でしたが、温度依存性がきつくまた装置全体の温度管理が必要になってAFM使っての観察は厳しかった。
カーボンナノチューブの基本的な特性
- 細かいチューブがある
- ナノサイズ
- 上記記事の場合だと、1.05nm
- 因みに、水分子の場合には分子の大きさが0.1nmくらい
- 分子間の距離は0.3nmくらい
- この径の大きさをどう求めたのか分からないが、まあ、直接物差しで当てている訳ではなく、SEM観察とかで決めてそうな気がする
- 表面修飾していないと基本的には炭素は疎水性
- 故に、通常よりも水は出ていきやすいという予想がある。
- 細孔内では、分子間力により、通常は沸点が上昇する
- 空気中の水分の吸収
- ただ、活性炭くらいだともうちっと大きい&かつサイズ混在、が故にサイズをコントロール出来るカーボンナノチューブの作り方が流行る
シンプルに言うと、「モノの表面にモノは吸い寄せられる」(分子間力)んですが、カーボンナノチューブの表面に馴染むより水分子同士でくっついてた方が熱力学的に安定だったりするわけです(まあ水分子同士での水素結合とか含め)。
水素結合は分子間力よりはオーダーちょい上で強いので、極性分子じゃないと相性が悪いんですね。
これの面白い所。
しかし、今回の実験結果は、シミュレーション予想とはまったく異なり、「100℃を超えた温度で水が固体化する」という意外なものだった。研究チームは、ラマン分光法(分子の振動スペクトルを分析する手法の一種)を用いて、直径の大きさを変えた6種類のCNT内部の水について調べた。その結果、最も小さな直径1.05nmの単層CNTでは、水の凝固点が最低でも105℃になっていることがわかった。温度を厳密に測ることは難しいため、実際の温度はもっと高く、最高151℃で固体化している可能性がある。
直径を0.01nmだけ広げて直径1.06nmの単層CNTで実験した場合には、凝固点の範囲は87~117℃に変化した。直径1.15nmの二層CNTでは、凝固点は-35~10℃となり、普通の水よりも下がった。直径1.44nmと直径1.52nmのCNTでは、それぞれ15~49℃、3~30℃の範囲で水の相変化が観察され、日常的な条件に近くなった。
MIT、カーボンナノチューブ内部で100℃超の水が凍結する現象を発見 | マイナビニュース
「高い温度」だけではなく「低い温度」も観察されているという事です。
この辺りになると、シミュレーションでは厳しい可能性があります。
メチャクチャサイズに敏感なようですし、これより小さい場合にはどうなんでしょ。
シミュレーションで予測出来なかった最大の理由。
観測結果(から類推されるシミュレーション結果)からの乖離がある場合には、シミュレーション結果を報告する事がそもそも難しいからです。
このようにCNTの直径をごくわずか変えただけで、凝固点が数十℃という幅で大きく変わることも、これまでは予想されていなかった。従来の研究ではCNTの直径を厳密に測定できていなかったため、サイズのわずかな違いから大きな結果の違いが生じることが知られていなかった。これがシミュレーションで正しい予想ができなかった理由のひとつであるという。
MIT、カーボンナノチューブ内部で100℃超の水が凍結する現象を発見 | マイナビニュース
観測されてない事実がシミュレーションで得られた時に、考える事は「シミュレーションが間違ってんじゃないのか」という話になるんでねえ。
まあ、シミュレーションと言いましても、数百個の水分子及び表面分子の境界条件を定めその分子の状態を探るというのは、かなり難しい話でして、計算機資源が潤沢であればいいですが、計算量を減らす為に条件削ったりすると、まあ本末転倒な話にもなりがちです。
自分はやってませんが、一定の距離が離れていたら計算から外すとかザラ。
あと、カーボンナノチューブ内の凸凹まで表現出来るモデルを作るとかになると、うんまあキツイです。表面に全く水分子が馴染んでない訳でもないとは思いますし、幾らかは確率論的に表面に溶けてしまってたりするでしょうし、ウダウダした話を全て考慮してかつfs単位で動くもののシミュレーションとか、考えたくもないです。観察を先取りするシミュレーションが難しいのはホントここらへんあるんやでーと。この上で、実際にプログラムのバグとか計算機のバグとか出て来るのもありますしね。
他。
CNT内部における水の固体化について、研究チームは「氷」という表現を使うことを避けている。「氷」とは結晶化した水のことだが、CNT内部で固体化した水において、氷の結晶構造が存在するかどうかはまだ確かめられていないからである。
MIT、カーボンナノチューブ内部で100℃超の水が凍結する現象を発見 | マイナビニュース
今回使ったのはラマン分光法ですので、結構浅い部分しか見えないと思いますうまくやっても。結晶構造解析まではやってないという風にも思います。
元のカーボンナノチューブ自体が小さいので面倒そうですね。
多分、謎の現象が現れて手持ちのラマンで測定してみたら何か固体っぽいという話なんだと思います。
今回の発見の実用的な応用としては、プロトン(水素イオン)が高速で移動する「アイスワイヤ」などが考えられる。水は、通常のプロトン伝導材料と比べて、少なくとも10倍の速さでプロトンを伝導できる。室温でも融けずに安定した固体相の水をCNT内部に充填すれば、理想的なプロトン伝導体として利用できる可能性がある。
MIT、カーボンナノチューブ内部で100℃超の水が凍結する現象を発見 | マイナビニュース
量論的にはそうなんですが、気色の悪い効果が出てきそうな気はします。プロトン伝導の話については、産総研にあります。
産総研:氷中のプロトン拡散過程の観測に成功
個人的にはここらへんの技術が進んでくれると嬉しいけど、ゴメン、まだ新物性で精一杯で産業化微妙だよと思いはしますが。