「この世界の片隅に」見た。

テアトル梅田で見たのだけど。
うーん。
感想がスゴく言いづらい。言いづらいんですよ。
いや、何というか。


いや、何というかなあ。


下手な解釈や先入観が伝わってしまうのが嫌なんで、まだの人は以降読まない方がいいです。
見てみるか迷ってるなら、見に行く事はオススメします。わりと真剣に素直に見た方がいいです。巷の評判とか一旦脇に置いて。












アニメ作品として素晴らしいのか、は、脇に置きます。
この物語には、それほどのドラマ性はなく、NHKの朝の連ドラよりも退屈な、ほのぼのとした日常が描かれてるんですね。
戦争だからって言っても、暗いエピソードとして描かれてるのは一つだけで、それも時間にしてそんなに長いわけじゃないです。
だから軽い、んですけど、ただ一つの話が、ホントに不意に挟まるのですよね。
これが、ヤッパリそんなに重い話ではないんですが、画面から消える色々なもの、ということがかえって重いんですよ。いや、人の死ってこんなに重いんだよなってのを久々に思いました。ある意味、マミさんの首チョンパなんですが。悲劇はそこで挟まってお終い、なのですよ。お葬式の場面もないのが不在を際立たせて。
で。
その重みがじわじわ解消される前に、戦争が、終わるんですよ。これが、また、重い。



多分、戦争の理不尽さみたいなものが、こういう事なんだと思います。
始まる事、始まってる事は、そこまで理不尽な感じに見えないんですが、いつの間にか、不意の死を覚悟させられてたんだということ、それが自分じゃなくて身の回りの人が亡くなるんだってこと、終わって振り返るとなんだったんだということ。


お父さんが、最初は弾が当たったかと思ったら過労で寝てたエピソード。
怪我してしばらく意識不明で病院にいた事。
家の義兄が石で帰ってきた事や、近所の人の話。
そういや幾つも死を暗示させる話が入って来ているのに、あまり気付かないようにして来たのに、否が応でも気付かされるんですが、ボンヤリクスクス笑ったりしてたので、一気に血の気が引きました。


いわゆる絵になる光景は、アニメの絵柄とは別に書き出され、多分あえて沁みるような絵を作らなかったのだろうと思います。
派手な空戦もなく、戦争中だから当たり前にある光景として、派手さもなく。
初めは戦死した遺骨が運ばれてきて、それから空襲がやって来て、やがて近くに爆弾を落とすようになり、でも近くに落ちてきた爆弾の数はそんなにあるわけじゃありません。たった一発の不発弾、運が悪くて人は死ぬ、そういう命の軽さみたいなものが、かなり耐え難いです。


この作品の戦争観について類似のものがあるかは、寡聞にして知りません。戦争によって日常が壊れていくというような描写は多いですが、日常が戦争になっても続き戦後になっても続くというよくよく考えれば当たり前な話を書いて、いつの間にか戦争に巻き込まれいつの間にか戦争が終わるという、日常に割り込んで来る戦争というのを描いたのは、かなり珍しいのではないでしょうか。
あと、日常を描くリアリティがおそろしくあの絵柄なのにあって、そう、瀬戸内の空ってあんま青くないんですよね。どこかしらうっすら白く、夕焼けはキレイなんですよ。
どこかしらおとぎの国のようでいて、その実70年前の日本という、ある意味夢のような世界で、でもその中での戦争で、弾がみんなを避けてくれるわけじゃないんですよね。


しかし、こう、キツいなあ。


こうの史代好きで読んでて、夕凪の街 桜の国もキツかったんですが、これはまた格別に堪えますね。いや原作はチラッと読んでて単行本で買うかなとか思ってたんですが、これはうんまあホントにキツい。
二回目見に行く気力がまだ湧かないです。


いやホントにキツい。
正直仕事に影響出るわこれ。