甲状腺検査について、突っ込んでおきます。

第8回福島県「県民健康管理調査」検討委員会
を見て。
はてダでも変に言及している人がいるのを見て。


「前の年より増えている!」
という人もいて、
Twitterでもそういう人もいるのだけども、
まだ、「先行調査」「中」で、「同じ人に対して甲状腺検査をしているわけではない」ということに気付いていない人案外多いのだなあ。

誰が流行らせているのか分からないけども。


「要はまだ一回目の途中なので、年度で区切られていても最終的には足し合わせる対象なんだよね」。経過については「まだ分からない、だって最初の一回目を全員にやってないもの」ということです。
複数の資料をちゃんと見れば察しがつくと思うけども、みんな結構目に付いた情報しか見ないのよねえ。

3 実施計画
1.先行検査:平成23年10月から平成26年3月末までに、1回目の甲状腺(超音波)検査を実施し、甲状腺の状況を把握します。
放射線の影響が考えにくい時期に行う現状確認のための検査
2.本格検査:平成26年4月以降は、20歳までは2年ごと、それ以降は5年ごとに継続して甲状腺(超音波)検査を行い、長期的に見守っていきます。

県民健康管理調査「甲状腺検査」について

簡単に言うと、増加傾向とは「言えない」。調査している人たちが明らかに違うので。ランダムに調査されている訳ではないし、偏りは出まくる。この間に割合が算出されても、「増えてるのか減ってるのか、それすら言及不能」。どこの人か分かんないしね。
これからも、進捗は大変だと思う。この計画自体、「今のリソースで行われる」ということを想定していないんだ。もっと増やすこと前提。そうじゃないと、「二年に一度の追跡検査」も行えない。
また、もう一つ言うと、「福島市では進んでいるけど他の市ではあまり検査そのものが進んでいない」。これは、ちょっと大変。一日700人から800人を捌ける体制を作れた、とあるけども、実はまだ福島県ではその程度しか捌けてない。
これ、解析でもちょっと大変で、どうしても全体調査だと時間の幅が必要になってきてしまい、どんどん統計的に言えること、が弱くなっていく。
元々、人を相手の調査とかそんなもんだ。全数調査とは理想的な調査のようでいて、実はそれに掛かる時間によって様々な影響が「見えなく」なってしまう。そもそも、放射線の蓄積すら、人を追跡して別途推算しなければ精度は知れたものなのよね。「浴びた放射線量」の正確さというのは、平均すれば動かない人でも、年間通すと意外と動いていることに気付くと、「限度を考慮しないといけない」。


LNT仮説を「大規模疫学調査で検出できるか、というのは、調査方法に限界があって、LNT仮説検証が出来るというレベルの精度では出ない」。ベラルーシの調査も、調査方法とか昔だから仕方ないけど、やはり限度がある。調査方法のイノベーションでもないと駄目じゃないかな。
前に、地下猫さんが、検証出来るかもみたいなこと言ってたと思うけど、実際、この辺りが限度なんですよ。本来、疫学調査って、研究の前調査みたいなもので、これだけで検証は出来ないし、人を限定して一定の精度で追跡調査しないと無理なんだよね。一年で影響がわかるほど出るとも考えていない(影響が出なくても、まだ影響がないとは言えないのよ、ガンでは。タバコ一年ぐらい吸ったからと言って、一年後に肺がんになるかと言われると、ほぼタバコ吸わなかった人と同じだろう。けど、生涯見渡せば、そのタバコのせいでガンになる人はいくらかは出てくる。そんな感じ)。
国家主義で強制的に行うなら多少は可能かも知れないけど、実際、旧共産圏でもそんなことは出来なかった。


まあ、粗忽な人、をチェックするのには使えそうなネタではあるなあというのが結論だねえ。
統計解析の能力って、数値解釈能力じゃなくて、どんだけ前提条件を読めるか(探せるか)ということだと思ってる。
陰謀を探すよりも、まずはその穴を埋めないとね。