大企業で働く、とか以前に。

「大企業で働いてみた」人が書いているから「大企業で働くことの上手いまとめ」にはたいていならない。
就職前に考えていたこと、と就職後に分かったこと、の差は出せるが。


大企業と中小企業、という比較はなかなか難しいのだけども、実際、大企業に束ねられ下流に流れていく大きな組織(会社としてあるわけではないが結局は連結子会社とは言えなくてもかなり大きな組織とみなせる)の中の場合には、一体どこにあるかで立場が違う。
面白いのが、通常は、上の方が小さいヒエラルキーで成り立つと思われているが、時々小さいプロジェクトでは逆転するということだ。
例えば、ウチの場合には中流だが、実作業者が実質二名なのに、プロジェクトリーダーが自分の会社と親会社の二名、で営業がついてくるような妙な構成になっている。顧客も同じく。結構間抜けだぜと思うが、「顧客業務に対する影響度」でプロジェクトリーダークラスの人材が出てきて「実質の開発ボリューム」で開発者が決まる、みたいなズレがあるからだろう。とは言え、実際のところ、開発のリソースが足りてないのではあるが。


福利厚生については、間違いなく大企業の方が大きい。実際の制度としての社員寮とか、月数万の住居手当とか、は言わずもがな。たまに協力会社社員だと交通費が自費だったりするみたいだし。労働組合があるところはたいていそのあたりの制度も労働契約内にしっかり書かれているが、小さい会社だとなかなかというところは多い。会社から出す郵送物とかを取りまとめてくれてたり備品出してくれたりマシンを画一的にそろえてくれたりするのは、結構な手間がかかってる。そん代わりイマイチなマシンだったりするけどなー。
年金も重要で、企業内でやってる共済の保険もかなりお得。若いうちはあまりその手のものを利用しないが。また、住宅補助というのは、家賃で暮らす人間よりローンで買う人間に手厚いことが多い。ちなみに会社都合転勤とかは出る金額がマジですごかったりする。これもまあ大手は、だけど。
ちなみに、会社都合で東京へ半年強行っていた時にはウィークリーマンション暮らしだったけども、全額会社が出していた。無論、出張手当もつく(長くなるとちょっと減額されるが)。


新規アイデアの実現、に関しては、どこに行っても苦労はするだろう。
会社業務と関係ないアイデアであれば、間違いなく採算の辺りを厳しく問われるはずである。その観念が抜けてる、のが信じられない。大きなビジネスとか言っても、要は、「自分らが採算取れる"サービス"はこれで」「この採算でやらせてくれそうな顧客は何社ある」って所が重要である。

とある年運用費億かかるシステムの廉価版、みたいなのを提案して回っていたようなのであるが自分の会社でも、潜在顧客が十社に満たないということが判明して停滞中というのがある。まあ、元々、オープンソースのでも組み合わせてれば、おそらく二人月でくみ上げられる(ただし社内情報管制とかは無視したら。そこを気にしだすと結構面倒)程度なので、商談としても数百万だろうが、適当にMSの製品とか組み合わせてWeb画面作るとか言って一千万強になったもの(無論親会社が絡み、どれぐらいの金額になっているかは知らん)だ。
べらぼうに安く済ませようとすると、いくつかの顧客の要件に合致しないというところは出てくる。が、たいていは何とかなるんだけどなあ。
何とかなるんであるけども、海外子会社を持ってない会社だとあっさり社内構築で十分だったり、共通基盤の為にアホほど費用かけてるので(Citrixがやたらがんばってる)、受けがイマイチだったり、そもそも利用者が一社で数十名から百名の程度である(社員がというところでなら、日本最大でも百名を超えない)ので一千万超えるものに対してGoサインが出ない。
これが、お役所旗振りがあるのだが、無論、体力のない会社ではお役所の言う信頼性担保の部分に関しては「やってます」とは言えない(顧客企業にその部分については補助してもらうことになる)。海外大手ベンダが出しているそれは、「中身がどうであれ」「そういう規定に従っていると明示している」。「お役所の人も会社内に引き込んでいるしな」。
その辺りで、「結局、品質とは関係ないところで勝負が決まってる」。

SNSに手を出さないのも、その一個一個のネタが、「意外と金にならない」からだ。それが「大きな」「小さな」とは簡単には言いづらいのだが、まあ、年間一億ぐらいの売り上げが出そうなら有る程度採用の目はあるが、それが一億に満たないのならおとなしく本業やってろといわれる「だろう」。ざっくり考えりゃ、それで使いそうな工数を年単位で考えて、売り上げ/従業員数をかけてみれば分かる。それが「研究」ラインにいない従業員が考えるべきことだ。
大手の衣料メーカーなどの「売り上げは大きい」顧客はいっぱいいるが、「システムに金を出す」という意味での大きな顧客ってのはそんなにいない。広報部門が「今シーズンの戦略」として投資する程度の金額しか出ないわけで、その辺り考えるとどうも「システム開発」より「顧客管理」が重要になってくるってのが分かると思う。


大企業の社員が持つ、「危機感」とは、なんか「関東大震災が起こるかも知れないシミュレーション」みたいなもので、どこが現実感が希薄である。
危機感といいつつ、では備えは?と言ったら案外されてない。部署で危機感を叫びつつ、上のもんがどーたらこーたらというのは、それが居酒屋談義というものだよという気がする。「会社がつぶれるかもしれない」ってのは危機感ではない。「会社をどうつぶさないようにできるかとかを真剣に考える」というのが危機感の帰結なのだが。
そのところ、実際には「大企業がつぶれるのは、俺(ら)ではどうにもならん」と思っているような気がする。ま、実際そうなんだけど。それにベンチャーよりはやはりつぶれない。つぶれるとしても従業員を巻き込まないような福利厚生体制になってるしなあ。
危機回生の一手は、経営陣が打たないとどうしようもない。大企業内でしょっぱいベンチャービジネスが何か会社の本流になる、みたいなサクセスストーリーは、外側でベンチャーがでかくなるよりも無理無策というものだ。多数の余剰人員を抱えつつ、周辺の利益を薄めるような部署も引き受けるってのは結構辛いものになる。下手な「儲かる部門作成」より、「不採算部門の徹底縮小」が利いて来る。
まあ、若い人には面白くもない話だと思うが。ちなみに、それやると、「顧客切捨て」が発生してしまう。ま、それも仕方がないと言えば仕方がないが、何かITって格差あるよね〜ってのはマジでそう。日本で大手らしいとある業界の最大手と五番目ぐらいの会社と比較すると(常駐してた)、隔世の感がある。CRFの画面作るのに二十人参加の会議複数回とかマジありえん。弁当出るのはうれしかったけど。でも結局はウチはあんまり費用が出ないので参加も出来なかったんですが(そりゃ会議でも工数かかりますしね)。一週間で構築完了とかに比べるとマジでもう隔世。


ぶっちゃけ、「ベンチャーのやってることやりたい!」ってベンチャーに行く人、「大企業のやってることやりたい!」って大企業に行く人、それぞれが持ってたら良いスキルとしての「反対側の知見」ってのはあった方が良いと思う。
顧客が「○○製品の次期バージョン、フロントがFlashになるらしで」って教えてくれた時に、「え、今からFlashっすか」みたいなことは言わなかったんだけども、つまり「片方が進んでいるところもあれば片方が遅れているところもある」のを注視しつつ投入、って所だ。いや、FlashじゃなくてHTML5、って意味じゃなくて、いまだに「速度」にしか目が向いてないんだなあというところで。操作画面とか権限設定とか悪いんだよね、アレ。そこがピンと来てないなら、まだフロント部分を上手く作れば勝ち目はあるかもなー、とかね。