誰の権利を守るべきなのか。

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このことについて、「遺族の要望があるんだから、匿名報道でいい。障がい者団体の指摘がお門違いだ」と言っている人たちは、どれだけ一面的にしか物事を見ていないのか。障がい者団体は「実名報道しろ」と言っているのではない。こうやって特例扱いされることに、世の中の偏見が凝縮されて表れている、それを考えろと言っているのではないだろうか。

“マスコミ憎し”で障がい者匿名報道を喜んでいいのか? WEDGE Infinity(ウェッジ)


そこの観点も踏まえて、「遺族の要望に答えよ」と言っている。
報道側に立つ人間に考えてほしいのは、「じゃあないからというので加害者側を引っ張り出す」というような、単純な理由で報道してるようにしか見えない現状の釈明だ。


障害者団体には、障害者団体の思惑はあるし、報道側には、報道側の思惑があるだろう。


ただ、障害者団体には、「今、そこにある差別から、遺族が逃げる事を許容しないのは、違う」と言っておく。この遺族の権利は、「障害者特権」と言うつもりは全くないし、「社会の中の人間に、誰にでも認められるべき権利」だと思っている。
死人にプライバシーが存在しないとしても、被害者遺族には自分達のペースで悲しむ権利くらい与えられるべきだろう。


こう言ってもいいだろう。
報道機関は、報道のコンテンツとなる人と、コンテンツとならない人を「如何なる工夫をした所で」差別する機関である。まずその人権侵害に関して、正しい手続きを以って差別を抑えて報道しているかが、そもそも信じられていない。
インターネットも含めてだが、メディアは力を持つ。それを正しく使う事は、そのメディアにおいては絶対条件ではない。あなた方は社内に倫理委員会を立て、キチンと査読した上で情報を発信しているか。そういう手続はそもそも考えているか。
大手新聞社は、「我々は~」というかも知れない。ただ、あなた方に情報が渡るという事は、俗悪なポリシーを持つ人間の手に情報が渡るかもしれないという事である。


実際、私が住んでいた大学寮に、写真週刊誌がやってきて、報道の社会的道義とか言っていたが、ただのカルト宗教のいち信者だった人間に会うのに、無作法にもアポイントメントも取らず、勝手に人の住んでる所の中の写真を取ろうとした事がある。


我々は、我々が意志ある人間であり、勝手な社会の道義とやらで報道機関に権利を踏みにじられるのをよしとしない。人間は社会に隷属するものではない。それが民主主義社会である。
社会の知る権利より遥か上に、被害者ならびに関係者が生きる権利がある。


まずもって、「障害者は特別扱いされている」というのの、その特別扱いをしているのが「報道側」だという自責の念はあるのか。
本来人の名前を知るのは、人の信頼を得て名乗りを受けてのものではないのか。
報道に乗せる前に、その人に対して報道によるメリットとデメリットを正しく説き、その上で、取材相手に選択させているか。


そして、現在の報道機関の怠慢を指摘しておく。
警察発表は、あくまでも情報源の一つでしかない。他にも幾らでも情報を入手する手段はあるだろう。実際に報道している人間の多くはちゃんと取材を行っているものと思う。
取材相手を説得するのも、本来報道のそもそも果たすべき役割である。あなた方は、何もせずに信頼を得て情報を得ようと思っているのか。この情報が財産と認識される時代に。
ハッキリ言うが、「警察から名前が発表されなかった」というだけである。それで、難しくなるとか言うなら、そもそも、今まで報道というものをしてきていなかったのだと認識した方がよい。あなた方が普段から障害者の人たちを取材していたのなら、とりかかりが一切ないとか有り得ないだろう。
そう、所詮、「話題になっているから集まっている報道なんてそんなもの」だ。
速報なんか、特にこのような被害が確定してしまった状況で、社会の正義には一切関係がない。耳や目を驚かす為だけで、そのような報道はむしろ風化に力を貸すだろう。大震災でそれは学び終えているべきだ。


大学寮は、取材を一切受けないかというとそうでもない。真正面から取材依頼があって、実際に入られた方もおられる。内容について確認はさせて頂くが。結構芸大の学生とかが卒業テーマに使って写真展やったりする。でも報道機関の方々って、ホント「報道」って顔でやってくるよな。そこにあった風景とか、取れそうにもない。



実際、社会にある差別なんかよりもずっと報道による権利侵害の方が酷くたちが悪いという認識を持っているからこそ、我々は匿名報道で十分という。
そもそも、 ライターが一番信頼がないと思うが。
炎上っぽいから集まってきただけの蝿であるという自覚無しに喋るイキモノが一番質が悪い。
google:網尾歩