高齢者雇用の雑感。

www.watto.nagoya

先月、非組合員の方から労働相談があった。相談者は定年が近い非正規労働者で、勤務先の就労規則には「雇用契約は1年ごとだが、原則60歳を超えて更新されない。ただし事情があれば最大5年までの定年延長を認める」という概要の規定があるとのことだった。

地域労組の団体交渉に参加したら初動を誤らなかった相手は手強かった - しいたげられたしいたけ

エントリに対しての軽いツッコミ。

法律解釈、あるいはお役所の指導のレベルと、現場の争いは異なるものであるが。
あと、有期雇用だったと言っても何回契約してたかとかそのあたりは分からんのでなんともだが。

簡単に言うと。

法律上は、65歳までは希望すれば働ける可能性が高い。
定年延長という形では企業も対応しないが、実質定年は65まで延長されているようなものだと思ってほしい。


裏は、年金の受け取り開始年齢が上がるという話なのだが、「無職でかつ年金が受け取れない」みたいな層が出来ると問題だからである。

定年が定められている場合には

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」より抜粋。

第二章 定年の引上げ、継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進
(定年を定める場合の年齢)
第八条 事業主がその雇用する労働者の定年(以下単に「定年」という。)の定めをする場合には、当該定年は、六十歳を下回ることができない。ただし、当該事業主が雇用する労働者のうち、高年齢者が従事することが困難であると認められる業務として厚生労働省令で定める業務に従事している労働者については、この限りでない。
(高年齢者雇用確保措置)
第九条 定年(六十五歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。
一 当該定年の引上げ
二 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入
三 当該定年の定めの廃止
2 継続雇用制度には、事業主が、特殊関係事業主(当該事業主の経営を実質的に支配することが可能となる関係にある事業主その他の当該事業主と特殊の関係のある事業主として厚生労働省令で定める事業主をいう。以下この項において同じ。)との間で、当該事業主の雇用する高年齢者であつてその定年後に雇用されることを希望するものをその定年後に当該特殊関係事業主が引き続いて雇用することを約する契約を締結し、当該契約に基づき当該高年齢者の雇用を確保する制度が含まれるものとする。
3 厚生労働大臣は、第一項の事業主が講ずべき高年齢者雇用確保措置の実施及び運用(心身の故障のため業務の遂行に堪えない者等の継続雇用制度における取扱いを含む。)に関する指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。
4 第六条第三項及び第四項の規定は、指針の策定及び変更について準用する。

http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=346AC0000000068&openerCode=1


厚生労働省令によって一部事業は除外はされるが」原則として、定年の取り決めがある場合には、希望すれば65歳までは働けるはず。
参考:
高年齢者雇用安定法の改正〜「継続雇用制度」の対象者を労使協定で限定できる仕組みの廃止〜|厚生労働省

厚生労働省の見解。

www.mhlw.go.jp

Q1-11: 有期契約労働者に関して、就業規則等に一定の年齢(60歳)に達した日以後は契約の更新をしない旨の定めをしている事業主は、有期契約労働者を対象とした継続雇用制度の導入等を行わなければ、高年齢者雇用安定法第9条違反となるのですか。
A1-11: 高年齢者雇用安定法第9条は、主として期間の定めのない労働者に対する継続雇用制度の導入等を求めているため、有期労働契約のように、本来、年齢とは関係なく、一定の期間の経過により契約終了となるものは、別の問題であると考えられます。
 ただし、有期契約労働者に関して、就業規則等に一定の年齢に達した日以後は契約の更新をしない旨の定めをしている場合は、有期労働契約であっても反復継続して契約を更新することが前提となっていることが多いと考えられ、反復継続して契約の更新がなされているときには、期間の定めのない雇用とみなされることがあります。これにより、定年の定めをしているものと解されることがあり、その場合には、65歳を下回る年齢に達した日以後は契約しない旨の定めは、高年齢者雇用安定法第9条違反であると解されます。
 したがって、有期契約労働者に対する雇い止めの年齢についても、高年齢者雇用安定法第9条の趣旨を踏まえ、段階的に引き上げていくことなど、高年齢者雇用確保措置を講じていくことが望ましいと考えられます。

高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)|厚生労働省

雑感。

本エントリの主旨ではあるが、大変短くなる。
労働争議だけが労働組合の意義ではなく、高齢化社会に向けて"どうすればいいか"というのを、企業や労働という形でしっかり考えていく一つの組織として労働組合は必要」「時代に合わせて、もう少し労使交渉だけではなく法律や実態も合わせて考えていく必要がある」。
社外のユニオンとかだと、どうしても争議中心になるので、時代に乗り遅れる感が強く、ディフェンス一方なのだけど、もう少しそういう法の主旨だとか将来に向けての提案もしていく事は必要だと思う。

余談

日本の高齢者福祉というと、どうしても老人ホームだとかばかり考えてしまうのだが、平均寿命が80歳超えるまでに伸びた状況で、現状の定年60歳という取り決めでは、高齢者の生活が破綻してしまうのだ。
それどころか、働き手として若年層だけを見てしまうと、今後少子化が進んでいるのもあって、企業の経済活動がその規模を維持出来ないという事もある。ま、そうなる前に、仕事ありそうな所に転職したんだけど、それでもまだ四十一で。売上を今後維持出来るような「引継ぐ仕事」がどんどん消えてる。単に企業には興亡がある、という話ではない。
今後、爆発的にロストテクノロジー化したシステム遺産が増えるとは思う。ここで言うシステムは、コンピューター化されたシステムだけではなく、人も含めたシステムな。
ロストテクノロジーの再発明負荷は結構高い。必要な所、インフラな所はされるだろうが、将来、かつてのCOBOLの位置をJava(のStrutsとか)が占める可能性は高いと思っている。実際、なんでお役所のシステム古いのって言ったら、投資されてないからで、そうしているうちにバブル世代も抜けメンテナンスをイジイジやってくれる高齢者なんてのもいなくなる。


そろそろ、高齢でも働いている人がいる社会という所を、もう少しイメージされた方がいいんではないかなと思う。