日本のバイオベンチャーはどうして成功しないのか。

海外事情等、製薬業界の情報があまり正確ではない形で出てくるし、大したヒアリングなしに記事が書かれる。

日本の「国産ワクチン事業」があまりに遅い真因 | 新型コロナ、長期戦の混沌 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース
これとか見ていると、現場をちゃんと見てない人の記事だなあと思う。

こっちの方が実情として正しい。
「コロナワクチン」日本が圧倒的に出遅れる事情 | コロナショックの大波紋 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

日本のバイオベンチャーはどうして成功しないのか

医薬開発のプロフェッショナルではない、違う畑の人がやってるから、というのは大きいかと思う。
とにかくズレている。
2階建てのサイトから失敗したバイオベンチャーをちょっと抽出してみる。

ECI

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会社ページはあるが、ほぼ死に体だと思われる。
http://www.effectorcell.co.jp/zhu_shi_hui_she/zhu_shi_hui_she.html


東京大学医科学研究所系。東大発バイオベンチャー第一号。
TAXIScanとそれを使っての研究をという事でやってたっぽいが、最後の方では受注したものもロクに作れない状況だったっぽい。

メディビックグループ

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現在株をルネッサンス・テクノロジーズに買われ上場廃止テーラーメイド医療とかをやるつもりだったっぽいが、ニュース見てもほぼほぼ死に体だと思われる。
株式会社メディビックグループ|最適医療のプラットフォーム


なお、前の大株主とは違う形でおもしろ事件が上がってた。
創薬ベンチャーのメディビックグループと大株主のCFキャピタルが交換日記で殴り合い : 市況かぶ全力2階建

メビオファーム

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ここも死に体だと思われる。ドラッグ・デリバリー・システムとかをやりかけてたようだが。

社会に役立つ創薬企業を目指す−メビオファーム株式会社

ペプチドリーム

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ここは色々な会社と提携出来てはいるので無事な類。ただし、びっくりするくらい製品は出してないです。ただまあバイオベンチャーとしては正しい。十年やってようやく成果が出るとかなもんで。特殊タンパク合成とか。
東京大学だけど理学部というちょっと違う所が味噌。
Pipeline パイプライン|ペプチドリーム株式会社 PEPTIDREAM INC

リプロセル

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iPS細胞の。東京大学医科学研究所と京都大学再生医科学研究所のハイブリッドみたいな感じだが、培地とか地味にモノ作ってる。
製品INDEX | 株式会社リプロセル

ただ、直接の医薬開発というよりは、研究基盤用という感じではある。こういう会社が日本に沢山なかったのがPCR検査が簡単に増やせなかった理由の一つではある。研究用の機材や資材が国内から調達出来ないししないという状況にある。

UMNファーマ

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昆虫細胞でのワクチン製造とか。今は塩野義製薬に買われ、塩野義製薬のワクチン戦略の中核になっているんじゃないかと思ってますが、評価としては微妙。
昔とは違い、昆虫細胞にウィルスが混入していない版なので多少懸念は減るが、アナフィラキシー的なものについての評価はまだ出てないです。
研究がどれだけ見込みがあるのかというとアステラスと組んでインフルエンザワクチンを申請通そうとしたのがピークだったかと。もうバイオ製品のOEMで食っていくだけでしょう。製薬企業経験のある実務家が創業という感じ。つまりは研究開発の基盤がある訳ではないので、ワクチン製造メーカー化するでしょう。
テクノロジー | 株式会社UMNファーマ

窪田製薬ホールディングス

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エミクススタト塩酸塩で一発狙っているやつで、米国で研究してた人が作った会社。ただ、一度治験失敗していて、オーファンドラッグとして狙っているのだが、そもそもなんで最初に失敗したのかの分析あるのかなという気が。まあ、そろそろ結果が見えてきている頃だとは思うが。
あと、なぜか公式Twitterとかnoteとかやってるが、ただのプレスリリースレベルなのであんまりSNS使っても意味がないなと。そもそもまだ市販されてないしね。
窪田製薬ホールディングス株式会社 | Kubota Pharmaceutical Holdings Co., Ltd.

オンコセラピー

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正直、コメントの必要はないと思います。ガンペプチドワクチン。最近Ph-3まで進んでたやつが失敗という形になりました。
https://www.oncotherapy.co.jp/wp-content/uploads/2021/07/210716_01.pdf


有望だと延々と言われながら、ここまでズルズル開発に失敗しているのは、なにか開発段階で問題あるような。

テラ

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樹状細胞ワクチン療法だか、先端医療ではありますが薬事承認まで時間かかり過ぎ。
まあそれよりも、会社のコンプライアンスがグッタグタな為、近寄るのは駄目ではないかと。

www.tella.jp

そーせいグループ

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がんばってそうだが、開発に成功しないとという事で、結構株価には苦しんでいる印象。基本的に開発して製造販売は別会社に委ねる形。まあしかし会社として大きいんだよな。ベンチャーというよりは開発主体の製薬会社としていいんではと思う。

アンジェス

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バイオベンチャー、研究開発能力とともに資金調達能力はまあ必要なのでな。阪大系。
遺伝子治療薬を販売までこぎつけているのだが、いかんせん薬価が高いのもあり売上もびっくりするくらいない。
売れるものをどう開発するかが一つ山だろうなあ。
開発パイプラインの状況|アンジェス株式会社

モダリス

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遺伝子治療薬。東大系。バイオベンチャーは製品にまで至らない段階で資金調達の為株式上場するので、マジで博打。流石に非臨床は突破してから大きな商いすべきだと思うんだがな。
開発パイプライン | 株式会社モダリス


まだまだ沢山バイオベンチャーはあるのだが。。。。。。

ちゃんとしたバイオベンチャーですら博打なのに、クソな動きを見せるバイオベンチャーもあり、また、日本のバイオベンチャー、やたら難易度の高いところを研究するなというか、それこそ基礎研究しっかり固まってそうにないのにそこからやるかという気はする。そのせいで二十年くらいは結果が出ないというような企業も出てくるのだが。。。。。。
本来バイオベンチャーは、豊かな資金を背景に研究開発を一気に進めるというのがモデルであって、沢山数を打つのでもなく沢山新規候補を見つけるのが仕事。マンパワー含め全然力弱いんだよなあ。
海外が金属製バットでホームラン狙っているのと違って、日本の場合にはマッチ棒でホームラン狙いをやろうとしているように見えて、そもそも成功する気がせん。


ドラッグ・デリバリー・システムも遺伝子治療も、夢の研究だとは思うが、現実問題として、成果を安定して出す為のキャズムを超えてない。そして、この夢、実用化されたとしても製造コストをかなり抑える形でないと絶対にペイしない。沢山売ったりとても安く作れたりという公算が必要で、結構な在庫も積み上がれば保管するにも金がかかるし、相当原価は抑えないといけない。


https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/bio/Bioventure/bioventurehoukokusyo.pdf