鉱滓ダムが決壊したようで。


ブラジルでダム決壊 集落に土砂 7人死亡200人余不明か | NHKニュース

鉱滓ダムなようだ。

いわゆる我々が想像する、治水用のダムではないのだが、治水用のダムよりもよく決壊し、しばしばとんでもない被害を出す。

* 鉱山にはつきもの。

鉱業では、鉱物の選別等に水を使う。その使用後の水は大量の廃棄物を含んでいるので、それ等を沈殿させないと川に排水する事が出来ない。その為にあるのが鉱滓ダムである。

排水を一定貯め、環境に悪影響のある水の中の固形物を沈殿させたり、悪影響のある気体を蒸散させたりする。鉄と共に出て来るヒ素だとか、処理中に出来るシアン化化合物とか。

はい、ハッキリ言って鉱物毒みたいなものが大量に貯まっていて、決壊すると大変とんでもないものになります。というかまあ鉱物って産業的に生産され環境中に大量にあると大抵自然は死にます。

* 余談

まあ、自然を都合よく利用するというのは、そういう危険はつきものです。農業ですら、おそろしい年月をかけて無毒化された植物を使ってたりする訳で。豚の元になったとかの猪、彼等雑食で人間噛み付いたり赤子食ったりします。

日本では今マトモに動いている鉱山は限られてますし産出量も知れたものですが、例えば温泉のところの川、酸性度高くて魚なんか住めないです。草津だったかな、下流の為に大量に石灰投入してたりします。

* 鉱滓ダムが決壊しやすい。

まあ、「自然にしとけば」みたいなのへの予防線はここまでとして、この鉱滓ダム、かなり決壊事故を起こしやすいです。

鉱業の宿命でもあるのですが、一つの村くらいなら軽く飲み込む規模で環境を破壊します。鉱山の為に水を引いて、しかしその山から出る鉱物を洗った水を丸々貯める為のダムを作る訳なんですが、この水が毒性のある鉱物の微粒子を含んでいるので、いやまあ土の中から出て来るのは様々な金属元素、酸化とか硫化とかの化合物なんで、現場ではマスクに手袋とかしてないと肺から吸収されてかなりヤバいんですよ。鉱山の町、みたいなところで近くに家とか作るとそりゃ作業員は便利なんですが、一般的に住民が健康被害に悩まされる事になります。

で、鉱滓ダムですが、当然ながら普通の治水ダムより固形物の流入に悩まされる事になります。特に厄介な産業廃棄物ですし、わりとダムにまんま残されてるコト多いんですよね。

で、周りの自然も禿げ、「想定以上に鉱滓で埋まってる」事が多いです。ぶっちゃけ、普通のダムは水を貯めてるんですが、鉱滓ダムは汚泥貯めてるんです。

メンテナンスも普通のダムよりかかりますし、ダムの底を掃除したところで、陸に山積みするんですよね。大雨とか地震で如何にも崩壊しやすい要件が揃いやすく、そして、一番大きいのが、これらは経済活動で行なわれ、費用対効果を見られるという事です。この場合、安全に対してのコストが低めにされるのは良くありますよね。

特に崩壊とかは初期には起こりづらく、つまりは鉱山としてはあまり投資したいタイミングではない、という事もあります。崩壊したダムも、四十年近く使われた後に、数年前に使用を停止されたもののようです。

* 日本では。

東日本大震災の際に、釜石の近くだったかで鉱滓ダムが崩壊してました。

地震に耐えるような形になってない、補強されづらいってのもあるんですよね。操業停止、普段の様子は誰も見に行ってない、所有者になってる会社も、負の遺産を引き継いだだけでどんな操業されてんのか知らんとか、そういう鉱滓ダム、日本ではもうひっそりとしかありません。

もう鉱山活動低下して久しいので、大きな事件にはされないとは思いますし、大規模鉱山少ないので安心してて大丈夫だとは思いますが、ただ、山奥に異様な池がある場合には、あんまり近付かない事をオススメします。いやまあ、だいたいは石灰岩由来のエメラルドグリーンで大した事はないけどアルカリ性過ぎて良いことないから。泳げるものではないし、魚もいないし。