構造的な問題は、簡単には解消出来ない。

www.nhk.or.jp

どういう事態なのかがあんまり伝わってないのかも。

ジェネリックの当時の最大手「日医工」(利益は低め、というのも売上優先で利益が出にくい薬剤のジェネリックも結構生産していた)、沢井は現在の最大手である。
問題になっている薬はテプレノン、工場は九州工場、安定性モニタリング試験というのは、一部の薬を取っておいて、長期だと12ヶ月とかの時に溶出が大丈夫か試験するものであり、別のカプセルに詰め替えるのは明らかに試験をパスする為の不正である。なお、ここをパスしないと、ロット単位の問題ではなく製品全体の問題となり、自主回収となる。影響は大きい。

ちなみに、おそらく内部告発スッパ抜きの話がちょっと出てたんで隠蔽これ以上不可という事で公表したと思われ、誠実とも思えん。
www.zaiten.co.jp

テプレノンでの不正に関しては、溶出試験をパスするようなカプセルや製剤の研究が必要だが。

申請時にも溶出試験を行っており、この場合三年なのだが、昔は規定が緩かったのだが今は湿度条件も加わっており、現在の製法ではおそらくパス出来ないのだろう。
しかし、溶出試験等の場合に大事になってくるのは、細かい工場での経験則を積み上げるような研究であり、成功して当然失敗すると製品生産出来ないというちょっと後ろ向きな研究になる為、難しい。
例えば、下のような研究を行うのだが、更にこれに加え「長期安定性モニタリング」という観点での研究を加える必要がある。が、簡単な研究ではない(単純に考えて時間がかかる)
https://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900047197/IY-K-Y-049.pdf


以下PDFが参考になる。
http://inorinohinshitu.sakura.ne.jp/koen/yosyutu.pdf

これ、著作権的に大丈夫なのかなと思ったら、講演した御本人のサイトらしい。
http://inorinohinshitu.sakura.ne.jp/about.html

現状が長期不正の上に成立している為、改善が簡単ではない。

これはジェネリックメーカーの立場や歴史もあるので簡単ではない。


薬の製造工程は、ある意味原始的とも思える、原料買ってきて粉砕して混ぜもの加えて錠剤にして(水を加えたり練ったりして)作成する(無論、何段階か工程は分かれているが)。機械も使うがばらつきは出る事が多い。製品としてのチェックが行われるが、均質性の他、数年後にわかる安定性試験とかがパスできない状況があったりするが、それってすぐになにか別の指標で分かる訳ではない。
研究はあるが、ある種の経験則として、「そこの場所のそこの機械」環境特有の部分がある。帯電の問題だったり湿度だったり温度だったりして、季節でも影響はある。無論、ある程度環境制御もされるが意外とコントロールしにくいものである。
ある程度の環境のばらつきを許容しつつ、原始的な製法で作成した上で品質を一定に保つ、というのは結構怖いと思う。製造時にちゃんと気をつければ品質がクリアされるという訳ではなく、何らかのミス(製品に影響を与えるとは思えないなにかのもの)の影響で品質に問題出る。


そこで、「何がどうなったら、作業を止めたりミスだとして対応しなければならないかの、予想がついてない」状況というのが多分生まれている。


ジェネリックメーカーも、給料が安いと言われているが、工場に働いている人はもっと給料が安かったりする。SOP(手順書)に従い作業する「だけ」と思われているからで、まあ能力は「要らない」と思われがちだし、昨今この付近の層の人のモチベーションは低い。
人間、生涯食うていけて家族養える金出せば、結構みんな真面目に働くと思うがなあ・・・・・・

ジェネリック医薬品のここでいう品質の問題は、「薬効の問題」とは少し違う。

そして、大体似たような値段帯の製品は、似たような問題を抱えてる、先行薬でも。ただ、ジェネリックが出てくるこの辺りのお薬は、新薬メーカーはせっせと売りに出してジェネリックメーカーが買ってるのだ。製造委託とかにもなってる。オーソライズジェネリックも、「先行薬と同じ」と言いがちだが、工場が変わってるとやっぱ違うよなとかにはなりがち。でも新薬メーカーも古い工場まんまジェネリックメーカーに売ってたりするけど。


ただまあ、溶出の不適合、安全性モニタリング試験という事で、健康被害のようなものはおそらくないし、簡単に言うと「成分があんまり溶けない感じ」なので、消費期限を限ればとか本来なら出来たかもだが・・・・・・試験自体を不正されていると、商品が助からんなあ・・・・・・
この場合、飲んでから効く時間がズレる(流石に大腸から出んやろう)タイプだろうとは思うが、有効成分の劣化が原因であれば薬効がない状態なんで、量が必要になってしまう。


困りはするが、致命傷ではおそらくなく、しかし規格外商品なんで処方に出来ない(どんだけ飲めばいいんか分からん)ので、廃棄にはなるんだろうが。


ただ、検査不正というところでは、現場でQAが不正な検査を続けていたという事で重大な問題ではある。つまるところ、国も決めた「薬の品質を守る仕組み」がまるっと機能していないという事であるからだ。

ISO9001と同じく、GMPはいい規格ではあるが、取り組むには相当の労力を普段から必要とする。

多分頑張れとかでは済まないんだよなあ。


問題は、かつての製造プロセスをGMP対応した時に急いで書面だけ対応したものとかで、新規立ち上げでは対応していく例もあるんだが不適合の状態に対応するプロセスというのがかなり未経験でかつ応援のない状況、なんだろう。
いや内部告発者はよく頑張ったよ、先輩からの引き継ぎに対して告発出来てんだもん。目標管理制度とかで、「Issueの発生率を下げる」とかって目標にされがちだしさ。


社内の評価制度から変えていく必要があるが、それが出来るんかなあ・・・・・・