なんで紅麹がという話になっているのか分からないけど、小林製薬がひでえという話なんよ。

shouyutechou.hatenablog.com
これ見てなんですが。


なんかね、紅麹の説明とかなんでしてるんでしょうかねえ。
そういう話と違うんですがね。

一応突っ込んどきますか。


ツッコミ

菌類の生物分類と哺乳類の生物分類は「比較は出来ない」。

そもそも遺伝子で近縁だとかの判断はある程度可能ですが、あくまでも近傍のみ、菌類と動物の比較は学術的に考えると「検討するまでもなく比較するものではない」です。

ニホンコウジカビは紅麹菌とは違うが、同属にはアフラトキシンを算出しガチの毒を出すものが知られている。

まあ、アフラトキシンというカビの毒なんですが、近縁種に強い毒を出すものがあり、一時的にコウジカビの毒生産が疑われた時もありました。今では、ニホンコウジカビ等は、変異によって毒を生産しなくなったのではないかと言われています。


紅麹とは違う種類、毒は生産してないよって言っとけばいいだけなのになあ。

今回で一番見ておくべきだろうところがめちゃくちゃ雑。

毒で健康被害が発生したとは誰も言ってないです。


ほぼ毒がどうたらという問題はないというか、そんな分かりやすい問題についてはそりゃ対処していますわというところで。
予期可能なんで確認はするんですよね。多分最初の医師報告も「欧州で紅麹サプリで基準が設けられた」とかの話を聞いて、医者が連想したものだと思われますが、

  • 予期されていない、重篤な有害事象(因果関係が否定出来ない、というのは因果関係が明確にないとは言えないという状況)が報告された
  • 一ヶ月の間に6件

というのは、多いんですよ。
これ、コロナワクチンでもスパッと当局報告はしていたかと思いますが、これなにせPMDA管理外義務がない商品の為、法律上問題があるとは思いづらいのですが、こういう問題が発生したら健康食品の規制が増えるのではと考えるなら自主的に速報出すべきで、出したらすぐに現状の生産を止め販売停止・自主回収をロット限定せずに一旦行うという判断が求められます。


医薬品なら予期されない入院が出るような重篤な副作用は1件だろうが報告義務があり、医師・会社両方から報告が出ます。2週間以内とかで出ます。私は製薬メーカー勤務してないですが、製薬メーカーのお仕事を業務委託される場合がありまあe-Learning受ける事もあるのですが、大体「副作用の話聞いたら絶対に会社の報告窓口に出せよ」と教育されてます。
てか、人工透析って、ほぼ医療の最終手段であり、相当厳しい副作用が、と思ってたら死亡されたようで、残念です。


こういう製品は、釜で成分を混ぜて練って、ロット単位で均質化させ、錠剤の形にしてます。なので、混入物を疑うのであれば、製造ロット単位での回収というのが多いのですが。
ただ、まだ製造ロット単位であるとかの推測が正しいとは限りません。製造ロット単位で何かあった時の調査用の錠剤を持っていたとは思われるのですが、そこの成分検査もまだ一情報でしかないです。毒素ではないとは言ってますが、では何なのか、とかになってくると、かなりの推測になり、もう研究するよりも商品を販売中止にした方が楽という事にもなってくるでしょう。
人体実験で毒性調べる訳にもいかず、死者を解剖してもわかるものでもないですから。


紅麹菌を使ったから小林製薬の問題が発生したという訳ではないです。
健康食品、特に「機能性表示食品」においてのリスクという風に考えるべきです。ジェネリック医薬品で大問題が上がり未だに業界が回復していないのですが、それが機能性表示食品の業界で発生したと考えた方がいいです。


日本では医薬品に関しては副作用被害者の救済制度等ありますが、健康食品にはそれはありません。
消費者庁も、健康食品に関してはネガティブキャンペーンのような事を正面からしてます。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/pdf/food_safety_190730_0001.pdf


これなんでかというと、こういうものの規制の歴史として、「健康食品みたいなもんは商売の自由で残されたところで、規制当局が規制かけらんない」というのがアメリカであったんですわ。リスクを当局が立証するまで規制出来ないんですよ。DSHEA法。
日本では、厚生労働省配下ではなく消費者庁というところに権限があり、健康被害が出たとしても国は助けてくれません。

そもそも勘違いされている紅麹サプリの話。

まず、紅麹を使っている発酵食品は東南アジアに多く、当たり前ですがそのすべてが毒性を持っているわけではありません。

それどころか、コレステロール値を下げる(コレステロールの生成を阻害する作用を持つ)成分である「ロバスタチン(モナコリンK)」が含まれていて、医薬品のもとにもなっているのです。現在世界中で出回っているコレステロール低下剤のスタチン類は、このロバスタチンがあってこそ。名前もそのものですしね。他にも、GABAとかいろいろ体に良い成分をたくさん含んでいます。

ただ、紅麹菌の一部に、「シトリニン」という物質を生成するものがあるのです。これが腎臓の病気を引き起こすカビ毒なんですね。

ヨーロッパで紅麹のサプリなどが制限されているというのは、このシトリニンが原因です。

紅麹とお酒や醤油を造る麹は人とゴリラ以上に違う(ので、パニックになるのはやめましょう) - 醤油手帖

スイスではシトリニンのせいとは違いますね明確に。ヨーロッパでは、紅麹サプリメントでロバスタチンの有効性を考え認めた上で、シトリニンが含有される部分についての上限量を粗くではありますが設定しようとしてます。ちなみにわりと「とりあえず」な感じです。健康被害が出る前っすわ。


以下Google翻訳なのですが。スイスのサイトでの紅麹について。
https://www-blv-admin-ch.translate.goog/blv/de/home/lebensmittel-und-ernaehrung/lebensmittelsicherheit/stoffe-im-fokus/unerlaubte-stoffe/monascus-purpureus.html?_x_tr_sl=auto&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=wapp

そもそも「ロバスタチンも薬として認可されてない」です。


私も高脂血症なんで、ロバスタチン5mg飲んでますが、ロバスタチンと同じ成分が含まれているという事は、このサプリメントは高濃度で飲むと医薬品並に危険性があると認識した方がいいんじゃないかと思います。80mgで横紋筋融解症、腎障害が報告されています。
人によって効果も違い、スタチン万能じゃねえんですよね。
日本では、ちゃんと用量用法を守る人が多いのでアレなんですが、サプリメントは勝手に増量しちゃう人が欧米でいるのもあり、結構用量設定は難儀です。プラス、検出限界もありますしねえ。

情報を集める前に、焦って「安全だよ情報」を出す事がそもそもどうなのという気が。

今回の件(被害に遭われた方が摂取し過ぎていると言っているわけではありません)で、小林製薬側では「サプリメント以外では被害に遭うとは考えにくい」と言っているのは、見つかった物質の量が理由だと思われます。

紅麹とお酒や醤油を造る麹は人とゴリラ以上に違う(ので、パニックになるのはやめましょう) - 醤油手帖

そんな理由で言っているなら、邪推もいいところです。

23年に小林製薬が原料として生産した紅麹は18.5トン。このうちサプリ用に使われたのは自社と他社を合わせて9.3トンあり、一部に「意図しない成分」を含むことを確認した

他社の食品向けに出荷した紅麹も9.2トンあった。問題発覚を受けて自主回収の動きが広がっているが、小林製薬はこうした一般の食品向けには本来想定しない成分は含まれてないと説明している。

小林製薬の紅麹、有害物質は未検出も「意図せぬ」成分 - 日本経済新聞

小林製薬の調査での話」ですが、原因としてこの「本来想定しない成分か」という事は分かりません(今後調査が進んでも明確に言えるかというのはちょっと怪しいというか無理だなと思います)。
小林製薬が想定したい状況への調査が誘導されている嫌いがあり、それを丸ごと信頼するのは全くオススメしません。
てか、医薬品でも巷間から集める情報で副作用が出てそうだなとかの推定までは出来ますが、立証とするにはとてもではないですが人体が複雑過ぎて無理です。みんなが飲んでみんなが死んでるとかなら分かりやすいですが、今回のは、アレルギーが出たんじゃないかなと思うと、個人差がはっきり出たり用量反応の関係が悪かったりするので、マジでわかんないのと、サプリメント飲む人はたいてい健康に不安を抱えている為、現在増えている報告事例の中に、どれくらい因果関係があるかも分かりません。入院増えましたけど、そりゃ最悪死亡するかもで人工透析した人が出てるから、早めの入院にはなりますよねとか、様々に悪い連鎖が始まってはいます。


私の意見としては。

食品に医薬品並の効果を期待して、添加したりするのはマジで止めましょう。


アメリカで、ダイエットサプリにエフェドリンがぶっこまれてた事例が十年くらい前かな、ありましたが、こういうのの何が厄介って、「有効成分の含有量が大体雑、品質が悪い、明確な効果だそうとしたら入れすぎになって健康被害が出る」んですよ。
例えば、これをね、有効な量の十分の一とかにして薄くしときましたーとかだと、アレルギー的な副作用はしっかりあるけど全然効果がないというどうしようもないものにしかならん訳で、結局のところ、エリクサーはないんです。
食品にはそういう幻想が特に抱かれがちなのですが、「そんなものはない」。


最近日本でも、「効果のある」みたいなのが求められているからか、ダイエット薬にGLP-1受容体作動薬とか使うとか、あぶねえ話が出てきましたが、
そもそも有効成分が起こす副作用も跳ね上がりますし、サプリだと品質がねえ・・・・・・


小林製薬が、「原料が原因」みたいなのを言ったのが、「いやお前マジでそういう事言うのか」と正直思いました。初報では事件があった事だけを公表、調査結果は次報以降だろうとか、とにかく情報出すタイミングが悪いです。言い訳の為の調査としか思われんですよこれ。


おそらく、これ機能性表示食品というカテゴリの全面チェック入ります。原料のコンタミが原因とかになると、このジャンルのものに、「原料のチェックの要請」が入ります。医薬品では無論既に行われているのですが、海外だろうがちゃんと生産工場に言って、査察している事を求められるでしょう。安全性報告の義務も検討されるべきでしょうね。
しかし、消費者庁にその調査能力がありそうにも思えず、PMDAも流石に厳しいでしょう。何より、メーカーもそれ以上にコストがバカ増えますのでどこまでやれるか分からんですが、ジェネリック医薬品業界では2020年の事件が未だに尾を引いているのを考えると、ちゃんと詰められたらだいぶ業界が整理されるんだろうなあと思います。
てかまあ、そろそろ健康食品GMPの「認定」狩っていいんじゃないかな。多分違反のオンパレードだと思うんで。
ウェルネスデイリーニュース | ドームの禁止物質含有サプリ、JHNFA-GMP認定工場で生産