松本騒動の、コンプライアンスとか人権デューデリジェンスのラインの話を少し。

abyss.hatenablog.jp
これの続きですが。


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なんというか、元ヤクザの人の言い方は、感情論風に言われてますが、どちらかというと倫理概念の話であり、現代このラインはかなり厳しいです。


企業が例えば広告を打つ、番組のスポンサーするという場合に、金出す以外の責任ありますよという事が追求されている結果なんです。
フェアトレードとかの話、SDGsとかの話と同じような話でして。
「昔に比べてTVで色々やりにくくなった」という所の背景として、「尻尾切りで済まなくなってきた」というのがあります。


もうひとつ、「不同意性交罪」という風に強制性交罪なんかが変わったんですが、結構厳しいんですよ。
https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00200.html

酒に酔わせる、押し倒す、迫る、というのは、全部不同意性交罪の「不同意」の要件に入ってくるようになりました。かつてのように「お前ホテル来たやんけ」とかの、そういう「ヤる側の免責のような抗弁がそもそも出来ないようになっている」と思ってもらって大丈夫です。
性行為やわいせつ行為に関しての「合意」のハードルが上がったと考えてもらってもOKなのですが、うんまあ、法律上明記されただけで、そもそも昔から非倫理的ではありましたし、された側の戦う余地を残すというところくらいの進歩になるかと思いますが、「少なくとも、LINEのあの返事で同意とされるという事はかなりないなという話です。申し訳ないが被害者さんがそう主張するしかないのですが、少なくとも"合意があった証拠"にはならない」です。


法曹関係者の説明でも、この不同意性交罪の解釈がどうにもまだ進んでいないので理解されていないまま説明されている可能性が結構高いなとは思ってます。
特に、この感覚の違いについては、保守的にモノを見がちなんでね。裁判の判例とかを見がちですし。でも、昔では合意が否定出来ないとして無罪になってたものが、確実に合意として明確なものが認められないとして有罪になっていくかと思います。まあ、地裁くらいはナカナカ感覚変わるのが遅い所がありますので、裁判所としても結構かかりそうですが、法律解釈で最高裁まで行けば時間かかるし費用かかりますけど対応されるかもですね。


なお、不同意性交罪の時効は15年、不同意わいせつ罪の時効は12年です。


とある人が、「文化として性接待は~」とか言ってましたが、うんまあ、例えば商業的に行っているというのであれば営業許可を取って合法的な内容でやるか、そうでなければ事前に契約書等を交わしてもらう他ないです。口約束でも契約は契約ではありますが、"合意の証拠"がなくて困るのはヤッた側です。


という風に、社会が変わろうとしているという事は、基礎知識として知っておいた方がいいと思います。あなたの見解はともかくとして。


文春の件については、「時効」というところで言われている方おられましたが、ちょっと違います。「法律が制定される前の事件に関して、法律が適用されない」という事でして、
ただし、このように罪かどうかの常識ラインに関しては変わったもので判断されるとお考え下さい。
いわゆる名誉毀損裁判が行われるとして、週刊文春は「過去は合意とされたようなものであるが、現在水準での合意とは見なされないものである」という主張が一定されると思います。「過去の法律の水準では合意とされていたかもしれんが、現在では違う」という場合に、「不同意性交罪の有無」では裁判で裁かれませんが、少なくとも「現在の水準での合意とは見なされないものである」という意味で記載されているというところで「真実相当性」とは認められるんじゃないでしょうか。
「合意してたやんけ」と「合意してません」がぶつかる場合、一般的にですが「合意」が認められる事はないでしょう。いやまあ、今までもそうなんですが、裁判所や警察があまりにも「暗黙の合意」とかを言って来たところがあり、その為、法律でわざわざそういう意図も含めて「これ合意じゃないよ」って書かれたんですよ。


ちなみに、既に一般の社会ではそうなってだいぶ立ちます。
会社人が、もし会社での力関係とかを使ってこういうパーティー開いたらそら偉いところの社長さんだろうが辞任、首です。何人もそういうので辞めてるんだって。
不倫はね、不倫相手を騙しているならともかく、事情を知った上でやってるなら、少なくとも不同意性交罪にはなりません。騙してたら口約束で離婚するとか言ってたらまあ昔から詐欺罪とかはありますけど。不倫は別の話です。


あと、b:id:KKElichika さんからこんなブコメを前エントリでいただきましたが。

正直色々まずいのが、松本人志への文春砲で。 - 深淵

利益供与を餌に性的関係を求める行為が(主体の性別を問わず)クソ(というか違法)であるのは論を俟たないが、"枕営業"的行為がアチコチに存在するのも事実なのよな。裁判例も普通にあるし、自分の業界でもまま耳にする。

2024/01/11 21:35
b.hatena.ne.jp
うんまあ、業界はともかく枕営業的なのは聞いた事はありますよ、芸能界以外でも。ただ、今、社会ではそういう営業は会社にバレたら首、とかになってきます。株主に対しての背任とかになってくるんですよ。わりと随意契約駄目だとか公共系でも言われるじゃないですか。そもそも今接待自体がかなり厳しい目で見られているんですよね。
そういう営業は仕掛ける側も排除されてきてます。


昔の話をしますと、「名誉毀損の概念が広まってなかった時代」になっちゃうので、逆に「お金を男が出す」という事例の方が増えます。文句言われない程度に女性にお金でも支払ってないと、ヤクザの人に知られて集られるとかあるわけでね。そういう裏社会が押さえられた先に、芸人が幅を効かせて無茶やったが、今ここでスキャンダルとして致命的にされるようになってきたと。
これ、性接待と言いましても、仕事として温泉地にいたピンクコンパニオンとは違うわけですよ。別の次元で違法とかはあったかもですが、金もろて仕事しているわけなんで、その場合には合意にはなるでしょう。ただまあ、日本で許される風俗営業は性行為駄目なんで、そこから先は個人個人の交渉事となるでしょうが、まあそこはグレーですが少なくとも店舗としては性行為でお金もろてないという事で。