結局の所、寓話の域を出ないことについて。

アピタル(医療・健康・介護):朝日新聞デジタル」を見て。

厚労省パンデミック対策のプランニングをしていた頃(2009年新型インフルエンザの発生前)、外資系企業から出向していたマーケティング・プランナーの方と机を並べていました。

彼の話はいつでも面白かったのですが、今でも覚えていることに、ある2つの書籍の売り上げについての話題がありました。それは、日本子孫基金という団体が2002年に出した『食べるな、危険!』という本と、翌2003年に出した『食べたい、安全!』という本で、いずれも講談社から出版されているものです。

どちらか1冊を買うとしたら、皆さんはどちらの本を買って読もうと思いますか? おそらく多くの方が、直観的に前者の『食べるな、危険!』を選ばれることでしょう。実際、後者は5万部の売り上げにすぎませんが、前者は23万部を売り上げたということです。

彼によると、私たちは、生命として「悪い情報」に気を取られるようにできているんだそうです。たとえば、私たちがサバンナに群れるインパラだとしましょう。草を食みながら、少しづつ移動しています。私たちが生存のために求められるのは何でしょうか? そう、食べられない毒草、足もとにいるサソリ、あるいは草むらから聞こえたジャッカルの足音・・・。これらは、個々で見分けるべき危険情報の数々です。

アピタル(医療・健康・介護):朝日新聞デジタル

よくよく考えて下さい。

この二冊の本は、「同じ所に左右並べられて販売・発売されていた」ものじゃありません。
無論。2003年になって最初のものが撤去されたわけではないと思いますが、売上比較には「時間」が関係しています。
単なる「前後」だけではないです。
基本的に、先行者有利というのが、この手の「特徴がハッキリしているわけでもない類似の本が出まくるジャンル」での常識だと思って下さい。そして、それ以上に、「同時期に起こった事件」というのが大抵のキーになります。
メディアで流行する場合、我々はそれの影響を大きくうけます。Web媒体でも状況はそれほど変わっていません。ひとつひとつは小さく動くメディアなんですけど、逆にメディア同士が独立ではありません。話は転載され続けます。

2002年では何がありました?2003年では何が?
http://www001.upp.so-net.ne.jp/fukushi/year/2002.html
http://www001.upp.so-net.ne.jp/fukushi/year/2003.html

無論、社会情勢がそのまま本の売れ行きに反映されるかどうかなんてのも分かりませんが、少なくとも、本のタイトル「が」とかよりも、はるかに売れ行きに影響する可能性は高いと思います。
いわゆる「卑近の情報に引きずられる」のだと思いますよ。

ちなみに、2002年〜2003年の本の売上からすると、
http://www.shifukunokotoba.com/ranking/2002.html
http://www.shifukunokotoba.com/ranking/2003.html
かすってもいねえっつー感じですかね。

そもそも、この本とんでもなくいやな本で、それで飯食っている人が基金とか言ってブームにのってドヤ顔してるだけですからね。
何の検証もないのがWikipediaにありますけども。
Wikipedia:小若順一

たまたま、同じ所が出している似通った内容のタイトルが分かり易く比較出来る本を「比較」するというのは、本を売る人は流石に馬鹿にして使わないでしょう。
データを適当にピックアップして、物語に落とし込みたいアホだけです。
まあ、最近「統計って実を売る商売だからあぶく売るのしんどいよね」みたいな状況なのでチラチラ見かけてます。

リーダーが安全な場所に連れてくってのもどうなんでしょうね。そんなリーダーってないと思うんですけど。
何でシカじゃなくてインパラが想像に容易いのか分かりませんが、サバンナファンタジーだと思います。
ちなみにシカだと、多分毒草は不味いのでそんなに食べませんが、一応トリカブトの花とか食べてるみたいです。
蠍は、そんな危険な生き物じゃありません。
ジャッカルじゃなくても、良く分からない生き物でもむやみに警戒するのが、野生動物です。
そんな出鱈目な危険情報認識だったら、多分死に絶えてます。

結局、正しく分析もしていないから、正しい結果は得られない。

いっつも思うんですけど、科学のレベル、専門の範囲ならば間違いではないんですが、
いわゆる広報活動や社会学的なところに踏み込んだ時に、科学者と呼ばれる人が妙な寓話を持ってくるところがすんげー気になります。

マスコミが〜って、思うなら、もうちょっとメディア論とかしっかり読んだ方がいいのに、何故徒手空拳でその課題に挑もうとするのか。
体験談並べるのって、健康食品の効果の宣伝にアリガチですよね。

医療行政の人が、この程度のライフハックなお話にやられるのは、本当にどうにかした方がいいと思うんですけどどうにもならないでしょうね。